蘇りの酒、MUSUHI
このお酒は災害により耕作放棄地となった棚田を蘇生させて
自然農法で育てた山田錦を原料米にして造ったお酒です。
お酒ができるまでの流れに、古事記や日本書紀に登場するタカミムスヒの神、
カムムスヒの神が司る数々の復活神話を連想して、MUSUHIと命名しました。
この二柱の神の名に顕れる「MUSUHI(産霊)」は、生成のエネルギー、
原初に戻るエネルギー、死から再生するエネルギー、と解釈されています。
それは山口県岩国市の中山間部に美しい田園風景が広がる周東町祖生でのこと。
2018年西日本大豪雨がもたらした土砂崩れによって祖生の一角にある数枚の棚田が埋もれました。災害は田圃を破壊しただけではなく持ち主である老齢の農家の耕作意欲も破壊し、田圃は耕作放棄地となりました。
ここで、持続可能な農業を目指し、農地の回復力を信じる、地元の若手米作農家の山崎さん、篠田さん、神尾さんの3人の有志が立ち上がりました。
彼らは、残った無数の石を取り除き、背丈を超えて生茂る雑草を引き抜き、何回も耕運を繰り返し、水を張り、荒代掻きをし、牛糞堆肥を与え、土壌の改良剤として貝殻を用い、微生物を活性化させることで土中の発酵を促し有機的自然循環型に地力が養われるように土壌改良をすることで死んだ田圃の“蘇り”を図りました。
重労働の伴う立地条件も、発想を逆転すれば、山の中腹にあるこの棚田はここより高所に田圃がないため他の田圃の排水が流れ込むことなく水源地から直接水が引けること、そして耕作放棄地であったことがかえって土壌のエントロピーをゼロに近づけたことが、有機栽培を試みるうえでの好条件になりうるという計算もありました。
重労働の伴う立地条件も、発想を逆転すれば、山の中腹にあるこの棚田はここより高所に田圃がないため他の田圃の排水が流れ込むことなく水源地から直接水が引けること、そして耕作放棄地であったことがかえって土壌のエントロピーをゼロに近づけたことが、有機栽培を試みるうえでの好条件になりうるという計算もありました。
もとより3人には無農薬、有機栽培によって「雁木」の酒米を造ることが念頭にありました。かねてからお互いを知る農家と蔵元はコラボレーションする機会を窺がっていたのです。そして両者ともに今がその好機ととらえました。
田圃に直接苗床をとる苗づくり ~ 田植え ~ 農薬に一切頼らないゆえの人力での除草 ~ 稲刈り、等々を農家と蔵人たちは共同作業しました。
この年トビイロウンカの大量発生により山口県は史上最悪の凶作となったにも関わらず、この棚田の稲は無事見事に稔りをつけることができました。農薬に頼らずウンカの害を撥ね退けて収穫に漕ぎつけたのは奇跡に近いことでした。
そしてこの米が、発酵という「いのち」の営みによっておいしい酒になりました。
MUSUHIは自然の賜物
澄みきった空気、透明で清冽な水
有機栽培で逞しく育った米
祖生の自然がそのまま詰まっているお酒です。
ラベルは暗闇から浮かび上がる“最初のいのちの輝き”をイメージしています。
※数値等の情報による予断を排してMUSUHIに向き合っていただきたいので、敢えて“精米歩合”を非公開にしております。したがって“純米大吟醸”の表記もしておりません。
※持続可能性を追求する農家と酒造家による酒米づくり(=酒造り)を通じての里山蘇生の挑戦はこれからも息長く続けていきますので、MUSUHIの売上の一部は、中山間部にある栽培困難地域を蘇生させて有機山田錦を栽培する取り組みのための原資とさせていただきます。